舶用遠心式通風機 修理
通称、VLCC(Very Large Crude oil Carrier)、全長333m、載荷重量30万トンの超大型原油輸送船の遠心式通風機の修理の為、ベアリングの取替作業を行いました。
遠心式通風機は原油の積み降ろしの際に使用するポンプ収納庫の換気に設置されています。
右側山のような形をしているものがベアリングです。このタイプを別名ベアリングユニットとも言います。
本来であればこのベアリングユニットは手で簡単に抜ける仕組みですが、この時は全く動じなかった為、軸(シャフト)とユニットとの錆による固着を予想していました。
左側の壁は機関室との隔壁があり、この通風機を動かすモーターは機関室側ある為、左壁から右ユニットまでは14cmしかなく非常に狭い場所で、しかも原油を扱う危険区画という厳しい作業となりました。
事前に場所を想定して特殊工具を用意するもあえなく破損 |
特殊工具で叩いても揺すっても一向に抜ける気配がなかったので次の手、こちらをシャフトに被せて機関室側から太いパイプで叩きユニットを抜き出すのではなく反対側へ押し込む作戦を試しました。 |
先ほどの画像ですが、この時に押し込んだ様子です シャフトとユニットが固着しているならユニットが少しでも動けば固着が離れて抜けるはずです。 押し込んだ幅は僅か2mmでしたが成功しました。 |
シャフトの上部の黄色いラインがユニットのあった位置になります。茶色く見える箇所はユニットがズレてシャフトの表面の錆が見えます。これだけですが、抜けたも同然でしたが、この先工具を使用し格闘するも結局は工具の方が壊れてしまいました。 |
結局、最後の手段としてディスクグラインダーでユニットの切断を断行するしかなく、直ちに船長と船主の許可を頂き、危険区画で火花を散らしての作業となりました。
まず外側を切断、中のベアリングまで錆びているのが見えます |
ベアリングの外側も切断、内側にあるボールまで錆ついておりこれが異音の原因と判明しました |
ついにベアリングの内側に到達しました。しかしここから最もデリケイトな作業です。この中にある軸(シャフト)を傷付けないようにある程度まで切り込みを入れ、あとは鏨で叩いて割らなければいけませんが硬い鉄ですので簡単な作業ではありませんでした。周囲の余計なものを排除できたので工具を使うスペースが確保できた為、工具を合わせてみると装着可、そこで力を込めて締めるもやはり動きません。最後には船内で一番腕力のある作業員の方のお力をお借りして思いっきり締めて頂いたところ鈍い音ととも遂に動きました。 |
シャフトは周囲を錆が覆っていました |
反対側も錆で真っ赤に変色していました |
きれいに錆を落としました |
カップリング接続 |
機関室側です。壁側が軸封装置です。この軸封装置でファン側で危険ガスが発生しても機関室に入ることはありません。船級協会の承認品です。 |
このように時には力仕事に至ることもあり、日々様々なメンテナンス作業の経験を積んでいます。